わたしモワたしも

山道を自転車で下りながら周りをキョロキョロ

【観劇】グランギニョル7/30夜

明日8/6東京千秋楽を観劇をするにあたって、

忘れないうちにいろいろなことをまとめて書いておきたい。

ネタばれしかない。

 

 

 

 

ダリちゃんつらい

終わっての感想は、「つらい」だった。
2016年の8月に、TRUMPシリーズをDVDで観てから、その世界にどっぷりハマり、ついでに言うと、LILIUMを観たのち工藤遥さんにどっぷりハマり、ハロプロの沼に沈んで出てこられる気がしない状態で1年近くが経とうとしている。おかげさまで、最初はハロコン映像を見ても工藤さん以外誰が誰かもわからなかったけど、今や全員の顔と愛称がわかる。

話を戻そう。

そんな繭期1年目の私は、「ダンピールたるウルはダリの子で、ウルが生まれるに至る複雑な事情…恋とか何かがあったに違いない」とばかり思ってた。
とんでもないわー!!!
ダリ・デリコを観る目がとても変わる。

 

序盤やTRUMPでのお茶目が過ぎるぶっとんだ性格はもちろん彼だけれど、
決してそれだけではない。
特に、

同じ立場にあるゲルハルトに対するダリ、
妻であるフリーダに対するダリ、

今まで見えていなかったダリというキャラクターの面を見せてくれていたなあと思う。

ゲルハルトに対しては、これは、ゲルハルトの方が強く抱いていたものだけれど、名家の家督を継ぐ、繋げる立場に在るものとしての様々な重荷。
重荷に対してのアプローチは違うものだけれど、同じ重荷を負うものにしか決してわからない様々を理解できる人。
そんな相手だからこそ抱く尊敬やうらやましさ。
きっとお互い察知しながら、生きていたんだろうな。
ゲルハルトは劇中で自分のことを空っぽだとか自分に無いものを持っていると言っていたのを強めに覚えている。

この劇中で、事件を追っていくなかで、お互いの事情を明かしていく中で、事件に立ち向かっていく中で、その気持ちをやり取りする。

みんなの期待を裏切らない貴族たろうとするゲルハルトに対して、一見奔放に生きているだけに見えて、そんなことはないダリ。
ダリがいるからゲルハルトが、ゲルハルトがいるからダリが、とお互いの存在によって
深みを増していく間柄。
パンフで染谷さんはゲルハルトのことを「貴重な存在」と仰っておられるけれど、
「それな!!」
って思いました。


そして、フリーダに対しての、ダリ。
真摯にフリーダを愛しておられた。
愛してるなんて率直な言葉は無かったように思うんだけど、ダリは、フリーダが序盤で彼に話した「ラファエロに対しては厳格な父親でいてくれ」という言葉をそりゃあもう忠実に守っていたんだと、終演後劇場から出る時に気づいて辛かった。
TRUMPで、ラファエロにだけめっちゃ厳しいめっちゃ凄いめっちゃ貴族のダリデリコちゃんだった理由が深い妻への愛だったんですよ。
しかし、一途過ぎて逆に不器用ともいえる。

深いその思いを持った厳格な父が、ラファエロを守護者にしてしまったんだろうなと思ったんですよ。それだけが理由じゃないというようにも思うし、末満ワールドはどんな微かな台詞にも込められた意味があると思うんで、そのあたりを検証していないから根拠ないんだけれど。
いまのところ私の中で、TRUMPシリーズにおける守護者は、過剰の末にいびつ。そして守護し通せない者。だから、守護者なんてなるもんじゃないよォ…と頭を抱えて観てる。
コクーンで繭期に返って狂ったように笑う彼を見るたび、

ニアデスハピネス…!」と思ってにやにやしていた私は、2012~2017演劇女子部の括りならばステーシーズが一番大好きなハロプロファン。
(脱線するなあ)


キキ・ワトソンつらい

同じ役者さんを出すなんてきっと何かあると思っていましたよ…!!
(ほかのキャストさんんも複数役担われる方がいらっしゃるそうだがわからない)

目に映るものすべてを愛してしまう、愛しすぎてしまうキキ・ワトソン。
188人のイニシアチブを受けたことで、高い戦闘能力を身に着けたキキ・ワトソン。
繭期の3人組でいるときだけは、おだやかなお姉さんのキキ・ワトソン。
繭期の子守歌で、同じ夢を見ようと歌うキキ・ワトソン。
オズが見たキキの未来は、花に囲まれている姿。
それに対して、「花は嫌いよ、すぐに枯れてしまうもの」というキキ・ワトソン。

いつも怒っているオズの言葉に従ったのは、オズの力を、仲間を信じていたからでしょう。
オズとキキのお別れのシーン、オズが未来をみて、「マリーゴールドの花だ」という。
そのときの優しいマリーゴールド色の光が忘れられない。

定まらない繭期と、延々と殺し続け戦い続ける旅路の合間の、とても静かで確かな3人の時間とお別れのときの2人の時間。
たまらなく素敵だった。

彼はオズの言葉に従って、逃げて、生きる。
末満さんは、「グレンと反対方向に向かって逃げている。どこかで、会えばいいなあと思っている」とおっしゃった。

グレンとキキの関係について、末満さんの明言はなかったけれど、とにかくキキは生きて子孫を残し、いずれ子孫のマリーゴールドは、LILIUMの世界を生きていく。

執念のような独占欲の強すぎるマリーゴールドの繭期の症状。

繭期の症状は、遺伝みたいなもんがあるんですねえ。
先日の末満さんの生放送で、オズ(触れた人の未来を見る、自分も含めて)とサトクリフ(触った人の死のみを予言、自分は不可)は兄弟と仰っていたし。

と、ここまで考えて思ったのですが、
666人に咬まれたアンリは、繭期の間―繭期を維持するための薬を飲んでいる間―だけ不死を得る。
「ウル」を飲んだ少女たちは、薬を飲んでいる間だけ不老を得られる。
666人まではいかずとも、その約1/3人に噛まれていて、これってきっとほかの人よりも不老への体質を備えてる。
もしかしたらリリーよりも、不老不死の素質を備えていたのはマリーゴールドではなかろうか…?

 

グランギニョルの結末つらい

ウル君がガブッといかれた瞬間「SUUUUEMITSUUUUUUU!!!!!」
と心の中でエセ外国人 ばりのシャウトをあげていました。
とんでもねえ。

育ての父たるダリちゃんがそのあとイニシアチブによって、
負けるな、負けるな、負けるな
と3回も同じ願いを込めましたが、
(文字で打つとこんなにも味気ない、舞台の魔力を持って全舞台ファンにこのシーンのダリちゃん見てほしい、こっちまで祈らずにいられないほど心揺さぶられる)
ウル君は実の父のイニシアチブによって、死の影におびえ生きるのです。
過ごした時間を超えてくる血の因縁。

序盤のバルラハの研究の中で、複数人に噛まれた場合、イニシアチブは意志の強さが反映されると言っていたような気がしました。
実の父の、子に対する「死の影に怯えて生きろ」という願い、ダリちゃんに対する憎しみ、TRUMPへの永遠の命の供物たるグランギニョルを作る彼の不老不死への願いはどれだけ強かったんだろう。
普通イニシアチブは噛んだ本人が死んだら解除されるはずだけれども、このあたりはダミアン・コピーの能力の残滓もあるのではないだろうか。

「永遠に枯れない花を作ってほしい」と願いを込められたソフィ。

「死の影に怯えて生きろ」と願いを込められたウル。

彼らは、父親からの強い強い願いをかなえてしまったんだ。

ソフィとウルに限らず、例えばダリちゃんも、彼の父親の所業によって復讐の対象とされるし、自分たちの意思によってどうしようもならない状況におかれてしまっている人たち。

それでも、必死に必死に生きていく姿は美しく見える。
ただ、その結果次世代にもたらされるものが残酷でつらい。
美しいからなおつらい。


希望とはなんだろう

末満さんは先日のツイートで、ひとかけらの希望があるとおっしゃった。
ひとしきり考えた結果、それは「ウル」ではないか?と思う。

まず、ウルのお母さんのスーは、彼に名前を残した。
「ウル…私たちの故郷で、希望という意味」
TRUMPシリーズで描かれる、名前の因縁を考えるならば、
ウルという名前には希望の力がある。
ダリちゃんに「負けるな」と願いを込められたウル。
そんなウルが残した
「君の代わりになる仲間を作らなくちゃ…可愛い女の子たくさんだ」
その言葉を糧に、ソフィは永遠に枯れない花を作ろうとする。
その中で作った薬に、「ウル」と名付ける。
「ウル」という名前に希望の力が備わるならば、

薬には、希望の力が備わっていることになる。
誰にとっての希望なのか、薬がどう機能するのか全くわからないけれど、それは希望の欠片といえるのだろうか。

 

フリーダさまの愛とか、繭期の3人の静かな時間とか、
衣装の翻りとか、舞台美術、個性大爆発の殺陣とか、美しいものもとにかくたくさんあったんだけど、TRUMP、LILIUMにつながる事実の衝撃が強すぎて、「つらい」しか思えなくなってしまった。


本日が東京千秋楽。
生のグランギニョルを観られるのは今日で最後。
とても楽しみで、とても怖いなあ。